夜更けのネオン煌めく歓楽街。行き交う人々と喧騒の群れ。
客引きの盛んなメインストリートを抜けて、足早に歩を進める二つの影があった。
それは極彩色の光を逸れて、薄暗い路地裏へと進んでいく。
影が通りを抜けた先、立ち並ぶのは一段薄暗く、目立たないように配慮された妖しげなホテル街。ここに並ぶのは明らかに、観光客向けの宿泊施設ではなかった。
「ヴァレーさん、コンビニ寄っても良い?」
「好きになさい。適当にお任せしますよ」
連れ立って歩く影から聞こえるのは、どちらも男の声。
「じゃあお酒と、軽く食べるもの買ってこようかな。明日は久々の休みだから、会うまでの間にやりたい事ずっとイメトレしてたんだよ? 覚悟しててよね〜」
弾む声とは裏腹に、もうひとつの影からは呆れたような溜息が漏れる。夜更けにホテル街のど真ん中でこうした会話をするということは、つまり彼らはそうした関係なのだろう。
どこか犯罪の匂いさえ孕むような薄暗い路地裏の向こう、コンビニの白光が辺りを照らし出している。弾む声の男は上機嫌に、その光へと足を向けた。
「——おや、少しお待ちを」
先ほどヴァレーと呼ばれていた男はぴたりと立ち止まると、コートのポケットに手を差し入れて言う。
「教団からの着信ですね。すみません、外で話しますので、貴方は先に必要なものを買っていてくださいな」
「えー? 飲み物はどうする? ハイボールで良い?」
ヴァレーは答えなかったが、耳に押し当てたスマホの陰、その手が男を追い払うようにひらひらと動いた。それを横目に、連れの男はコンビニへの扉を押し開ける。
ヴァレーは店舗脇の喫煙スペースに身を寄せたまま、通話を続けていた。内容は、取るに足りない業務連絡だ。それでも、夜更けの街に声が響くのが気に掛かり声を落とす。
通話が終わろうとしたその時、視界にふらつく影が差し込んだ。それに気付くと同時に、嫌な予感が彼の背を撫ぜた。——面倒な事にならなければ良いのだが。あの動きは十中八九、酔っ払いだろう。ヴァレーは僅かな警戒を胸に、スマホをコートに滑り込ませた。
だが、案の定と言うべきか。大柄な影は一人でコンビニの前に立っているヴァレーを見るや、ゆっくりと近づいてきた。時折チラつく電灯が、その輪郭を少しずつ浮かび上がらせる。短く刈り上げられた髪。よく鍛えられた肩幅と体躯の厚み。身に付けるのは、己の肉体の輪郭を誇示するためだけの衣服。この場所で声を掛けてくる輩の意図は知れていた。
大量の酒を浴びていたであろう匂いを漂わせたままの男は、ヴァレーの前で立ち止まると口角を釣り上げてこう言った。
「おい、にーちゃん一人か? なあ、どっちだ? 俺とハメねえか?」
やはりそうかと、ヴァレーは嘆息した。開口一番、この台詞とは恐れ入る。平素であれば、通報されて然るべきだ。だが、この場所にそんな常識は通用しなかった。ここに並び立つホテルはおおよそそうした目的のものばかり。そして、この場所でこの時間、男が一人で手持ち無沙汰にしているなど、声を掛けてくれと言わんばかりである事はヴァレーとしても充分に承知していた。
男は続けざまに捲し立てる。
「こんな場所につっ立ってるって事は客と待ち合わせか? なあ、やる事やってんだろ?」
ヴァレーは心底から面倒臭そうに、男に胡乱な目を向けた。
「それに、あんたウケだろ。その顔に書いてあるぜ。ほら、男のチンコ咥えたいんだろ? おれのはでけえぞ。虜にしてやるよ」
ベロベロに酔っ払った男が、目の前で卑猥な仕草を見せつける。うんざりしたままコンビニに目を遣ると、連れ合いは未だ呑気に飲み物を物色中である。この状況に気付いてなど居ないようだ。ヴァレーは溜息を吐くと軽く目を閉じ、すぅと息を吸う。そして纏う空気を変えて、上目遣いに男を見上げた。
「んおっ、なんだぁ? そのエロい顔。誘ってやがるのか? 俺が一晩中可愛がってやるよ」
物憂げな表情を向けるヴァレーに当てられた酔っ払いは、まんまと手中に収められそうな獲物を逃すまいと、その肩に手を伸ばす。
ちょうどその頃。ヴァレーと連れ立って歩いてきた男は買い物を終え、コンビニを出るところだった。キョロキョロと辺りを見回して外壁に目を移すと、ガタイのいい男がまさに、ヴァレーの肩に手を掛けようとしているところだった。
「え、なっ?! ちょっと! ヴァレーさん、あぶな——」
その声が届くか届かないか、ヴァレーは酔っ払いの手を取る。
「——おう、その顔、待ちきれないんだろ?」
「ええ。その身体に教えて差し上げますよ」
「教える? はっ、ナニを教えてくれるってんだ。そりゃ楽しみだな。足腰立たねえようにハメ倒してやるよ」
すりすりとなぞり上げられる手。コンビニの袋を下げて駆け寄ろうとする男。酔っ払いが、鼻の穴と下半身を膨らませた次の瞬間——。つんざくような絶叫が、辺りに響き渡った。
「うっ、ぎゃぁぁぁぁぁ!! 痛いっ!! 痛い痛い!!!」
「へ?」
駆け寄ろうとした男は何が起きたか分からず、きょとんと立ち尽くす。
ヴァレーはうずくまる酔っ払いに向けて嘲るような瞳で見下ろすと、こう告げた。
「ああ、艶のある悲鳴——とは程遠い。どうせ、ぶら下げているのも粗末なものなのでしょう。どうです? まだ致しますか?」
冷ややかな声が頭上に浴びせかけられる。酔っ払いは酔いが覚めたと言わんばかりに青ざめると、痛みに疼く左手に目を向けた。そして再び情けない悲鳴を響かせると——逃げるように走り去った。
「あ、あの——ヴァレーさん?」
その一部始終を目撃していた彼が、おずおずと声を掛ける。
「はぁ。全く、貴方が遅いからですよ。こんな場所に待たせたままで、何かあったらどうしてくれるのですか?」
連れ合いの男は「電話が来たと言ってこちらを厄介払いしたのはヴァレーさんじゃないか」という言葉をすんでのところで飲み込みつつ、待ちくたびれたとばかりに腰に手を当て、眉を吊り上げているヴァレーに平謝りをした。久々の連泊に舞い上がり、ついあれこれと買い込んで時間を掛けてしまったのは事実である。その一方、暴漢を撃退したヴァレーの一面に驚いていた。
「——ねえ、ヴァレーさん、さっきのって……」
「ご心配には及びません。自分の身くらい、自分で守れますよ」
連れ合いの男はホテルに向かいながら、ヴァレーの話を聞いていた。
かねてから、ヴァレーには信心している教団があるのだが、その活動の一つに武術の鍛錬があるそうだ。役員は強制参加のようだが、彼はそれほど積極的ではないらしい。だが、「師範の指導がお上手なので、自然とその辺のごろつきを撃退できる程度の護身術は身に付いてしまいました」ということだった。
「もう、ほんと焦ったよ……。俺なら一発だったのに!! 相手が一人だったから良かったけど、仲間が隠れていて返り討ちにでもされたらさ……」
「ウフフフッ。その時は貴方を盾にでもして、逃げてしまいましょうか」
悪戯っぽく微笑んだ目元はホテルの入り口、行く先を促して熱を帯びている。先ほど男を誘っていた妖艶を思わせる顔に、連れ合いはごくりと喉を鳴らした。
†
「……っ、は、ねえ、ヴァレーさん……? 自分の身体は自分で守れるんじゃなかったの?」
「っ、るさい……ですね……っ、ぁ、貴方はどうしてそういう……っ、事、を、ん、はぁ……っ……」
「……てかさっきのヴァレーさん、あんな誘い方しちゃうんだね」
「は? 何ですって……?」
男は腰を深く突き挿れると同時に、ヴァレーの乳首をきゅうと摘み上げる。
「んぅっ?! ひ、あ゙ぁぁあぁっ……♡」
「んー、俺が見る顔はいつもこうしてトロトロでかーわいいんだけど。ほらここ、コリコリされるの気持ちいい?」
「いゔっ、あん♡ う、や゙ぁ……っ、あ゙♡」
「どーしたの? 乳首シコられて腰うねってるよ。ナカももっとシて欲しいんでしょ」
「貴方っ、しつこい……っ、や、あぁぁっ、ん、ぁ……!!」
「……でもさ。あの顔はもう、誰にも見せないでよね」
ぼそりと溢した男の顔から、ヘラついた笑顔が消える。それと同時にがっちりと腰が固定され、いっそう激しい突き上げが始まった。ヴァレーは突如訪れた快楽の波に絆され、弓なりに背をしならせて喘ぐ。
「あ゙、やあ゙ぁぁぁっ?! そこ……い、ぁ……だ、め、あぁっ、も、クる……ッ……♡」
「もうイキそうなの? このままお尻で気持ち良くしてあげるね」
「ん、ん゙んんんん゙〜〜〜ッッ……!!」
「あ゙〜〜すっげ……、きゅんきゅん吸い付いて来る……!! ヴァレーさんエッロ……っ」
男はヴァレーを抑え付けたまま、結合部をぐぽぐぽと激しく混ぜ合わせた。深く繋げた突き当たりに亀頭がぶち当たる度、潰れた愉悦交じりの濁声が辺りに響き渡る。
「……ッ、ねえ、声すっごい……。ヴァレーさん淫乱だから、これくらい激しくないと満足できないんだよね?」
「んお゙ッ……ひ、あ゙ぁ……ッ゙、や、貴方、ぁ゙……ッ♡」
見開かれた瞳から伝う涙。それを見た男は目元にそっと口付ける。
「まーだまだ、夜はこれからでしょ」
そう言うと激しい突き上げから一転、互いに繋がり合ったままの柔らかな腰使いへと移行する。小刻みに震えるヴァレーの息づかいと合間に漏れる喘ぎが、男の嗜虐心と情欲を煽り立てる。じっとりと汗ばむ身体、柔らかく弛んだ腰をベッドシーツに沈み込ませ、一定のリズムで揺らしていく。緩やかに溶け合うままの身体は与え合う快楽の深みへと嵌っていった。
「はぁ、や、ぁ、んっ、ん、ん……っ……」
先ほどまでの大仰に、かつ華美に雰囲気を盛り上げるような喘ぎではなく、堪えきれぬ甘ったるい鼻濁音がしっとりと淫猥に辺りを満たしていく。ヴァレーの腕が、男との視界を遮るようにその顔の前に翳された。
「ん? だーめ。ちゃんと顔見せてよ」
男は腰をホールドしていた手を離すとヴァレーの両手首を掴み、左右に開いて縫い止めた。
「……っ、う……」
悦楽と羞恥の狭間で歪められている顔が、男の手によって無防備に晒される。
「さっきまであんなに盛り上がってたくせに、急に気持ち良くなるの恥ずかしくなっちゃった? ほら、部下にケツ犯されてよがってる淫乱上司の顔、ちゃんと見せてよ」
その言葉に、ヴァレーの顔にサッと赤みが差す。
「……目の下のクマ、また酷くなってるんじゃない? 目尻の皺も深くなったかな? それに、無精髭もまたそのままでさあ。ま、それでヴァレーさんの魅力に気付く人が増えなきゃ、俺は何でも良いんだけどね」
男はヴァレーの手首を押さえつけたまま、竿の先端だけを抜き差しする浅いストロークを繰り返した。ローションのぬめりが音を立て、カリ首がアナルの縁を引き抜いてはまた柔らかく押し戻す。ちゅこ、ちゅこっと粘着質な音、焦れるような肛腔への刺激が思考を奪い、ヴァレーの脳内に快楽物質を溢れさせていった。
「……ん、はぁっ……♡ ぅ、あ゙……ッ……ぁッ、あ……」
「浅いとこ、こうされるのも良いでしょ? 足先ピクピク震えてる。その顔も全部見えてるから」
「んんっ、あ゙っ、あっ、ふぁ、あ゙ぁ……ッ!!」
「かーわいい。自分から腰動かして、チンコ欲しがってるの? あーあ、仕事では高飛車な感じで指示出ししてるのにさ。こないだ『巫女なしの劣等以下』ってバッサリ切ってたヤツ居たじゃん、あいつにこの姿見せられる? 休みの度に、年下チンコにお尻で媚びて服従しちゃう淫乱だって。ほら、この音。さっきよりぐぽぐぽ鳴らして、いやらしい音自分で立ててるよ」
その言葉に、腰の動きが遠慮がちに止まる。それを見た男はぞくぞくとした嗜虐心を募らせていった。そう、こういう時はつい意地悪をしたくなるものだ。男は抜き差ししていた竿をずるりと引き抜いた。ちゅぷっ、と名残惜しそうな粘膜の音と共に、赤く色づいたアナルの空隙が閉じていく。
「さっきまで自分からしてくれてたのに。寂しいなあ」
「……っ、貴方が余計な事ばかり言うから……ッ」
絞り出すような声、視線を逸らして眉根を寄せる顔。だが、下半身は待ちきれないと言わんばかりにもぞもぞと動いている。羞恥に悶えるヴァレーの姿を見て、男の方も余裕を無くし始めていた。
「うっそ……すっっげーハメて欲しそうな顔してるじゃん。ほら、どうしたいのか自分で言ってみてよ」
「自分で動きますから……その……」
背に腹は変えられないという風に、ヴァレーは掠れた声でそう告げた。
「じゃあほら、早く上、跨がって」
男は短く言うと、ラブホテルの大きなベッドに大の字になる。
ヴァレーがふらふらと身体を起こすと、後ろに束ねていた髪がぱさりと解けて顔や肩に掛かった。彼の見た目は、いかにもやつれた中年の男性だ。だが一人で放っておけば、そうした目的の男に易々と目を付けられるぐらいには妙な色気がある。お世辞にも良いとは言えない髪質ではあるが、汗ばんだ首元、顔に張り付いたそれが妙にアダっぽい。
解けた髪にさっと辺りを見渡し、髪を結い直そうとしたヴァレーを急かすよう男が言う。
「——早く挿れたら? そのままで良いよ」
焦れていた所為もあるのだろうか、ヴァレーも髪を束ねることを諦めて男の上へと跨る。鎖骨に掛かるほどのパサついてうねった髪を掻き上げ、首を傾げて耳に這わす。気怠げに瞼が落とされた目元。揺れる白い睫毛。薄っすらと開いた口元の無精髭。そして、雑に下ろされた髪——。パッと見であれば、彼は男らしい部類の容姿なのだろう。だが、ウケとしての役割がそうさせるのだろうか、その色気のある所作や言動が、独特な妖艶さを醸し出していた。仕事では特殊な装束を身につけるため、彼はその顔を含め、肌を見せることが殆どない。多忙を極めているが故の、最低限の身だしなみで最良のパフォーマンスをこなさなければならないヴァレーの事情は、同業である男が一番よく知っていた。だが、そんなストレス過多な彼の欲の発散がこうした性的な場である事、そして自らがパートナーとして選ばれているという事実に、男はどうしようもない優越を感じてしまう。
ヴァレーはローションを垂らすと、尻の谷間で男のものを擦り始めた。先端がアナルの入り口を掠めるたびに、目元が快楽を求めふわりと蕩けるのが見える。そうした甘やかな動きが幾度か繰り返された後——男は戯れに、ぐいっと腰を突き上げた。
ぐ、ちゅんと音が鳴り、聳え立つ雄の生殖器が、緩んだ後孔にずぶんと嵌まり込む。
「うあ゙っ♡ ん……あぁ……っ……!!」
「どうしたの? ガバくてすぐ入っちゃったけど」
意地悪っぽく投げかけた言葉に、ふと不安そうな色が差す。
「ふふっ、嘘だって。なーんか、ヴァレーさんってそういうとこ素直だよね? 柔らかくて飲み込みがいいのはそうだけど、中はすっごいから安心しなよ。熱々で締め付けも抜群で、俺すぐにでもイきそう……。ほら、動いて?」
男はもう片方の手でヴァレーの尻をひっ叩くと、尻を鷲掴みにして上下に揺すり始める。
「んーっ……! んっ、んう…っ、ん……っ……♡」
ぱちゅ、ぱちゅと肌を打つ音。顔を上げて腹の上を覗き込むと、しゃがみ込む尻の谷間に自らのズル剥けになって勃ち上がった怒張がずぼずぼと繰り返し飲み込まれては引き抜かれる光景が見えた。男は目の前に広がる無修正の卑猥な光景に釘付けになってしまう。
——ああ、排泄腔に陰茎を生で抜き差しして、それがお互いに一番気持ちいい行為だなんて。本当に、なんてグロテスクなんだろう。それがどれだけ非日常的で危険な行為か、医療に携わる俺たちが一番よく知っているはずなのに。
男の意識は、二人が出会った頃の記憶をなぞっていた。
◇◇◇
——そう、俺たちが出会ったのは数年前。
俺は大学病院に勤める技師で、ヴァレーさんはそこの外科医。あの独特な話し方や雰囲気に惹かれて飲みに誘ったのが事の始まりでさ。サシ飲みで酔いも回るうち、俺がやらしい話をし始めて。そしたら、意外とヴァレーさんも話に乗ってくれて。俺は元々男が性対象だったから、この人どうなのかなーと思って探り入れつつ話を振ってみたんだけど、まさかのビンゴ。ヴァレーさんも満更じゃなかったみたい。しかも役割もバッチリで、そこからは巡り合わせに火が付いて、酔ったままホテルに雪崩れ込んだ。まあでも、初めはセーフな行為しか許してくれなかった。それに恋人というよりも、性的役割の一致による発散相手。いわゆるセフレってやつ。俺の勘では当時、ヴァレーさんは他にもキープがいたみたい。それに気付いてからはなんか火が付いちゃって。ヴァレーさんの全部が欲しくなった。それである日、悪い友達から薬をもらってヤってる時に嗅がせたんだっけ。狂熱の香りってやつ。そっちの界隈ではまあまあ有名だけど、デート系みたいなゆるふわのやつじゃなくて、もっぱら乱交とか疑似レイプ向けのえっぐいやつ。経験あるかなーと思ったけど、お薬自体始めてだったみたいで。そしたら効果覿面、人が変わったみたいに涎垂らしながらもっと、もっとってねだって来てすっげえ興奮した。夢中でヤってるうちに途中でゴム切れちゃって。そしたらあっさり、あのやらしい口調で「そのまま続けてください」だって。ド淫乱の便器確定で鼻血出るかと思った。もちろん、お願いはちゃんと聞いてあげたよ。そのまま突っ込んでお互いの剥き出しの場所を繋げてどろどろのぐちゃぐちゃに混ぜ合わせて。調子に乗って「中ぶっかけていい?」って聞いたら流石に躊躇ったように見えたんだけど、俺もう腰止められなくて。ヴァレーさんもスパートの突き上げにスイッチ入っちゃったのかな、足背中に絡めて、俺のこと離してくれないの。「いやいやまずいっしょ、このまま離してくれないならどうなるか、男なら分かってるよね?」って一応形だけの確認はした。——それでギチギチに密着させたまま限界迎えて。多分すっげえ出たと思う。いや一回で出過ぎだろってツッコミ入るくらい出した。それからちょっと頭も冷めてきた頃に萎えてた竿引き抜いたんだけど、かなり奥にぶち込んだからか何も溢れてこなくて。AVみたいにごぽごぽケツから精液漏れてくるの見たかったのにな〜ってぼんやり思ってたら、急にごぷっ! て大量に溢れてきてさ。やっべー、スマホ枕元に置いときゃよかった。これで1か月はシコれるしエロすぎでしょってガン見してたんだけど、俺も悪酔いしてたのかな。何で一番奥に種付けしてやったのに拒否するんだよこの身体、躾なってねえなってムラムラして。そんなこと考えてたらまたガチガチに勃ってきた。初のヤクキメ中出しにほぼ意識ぶっ飛んでたヴァレーさんのケツにまたおっ勃てて、足も頭の上までちんぐり返しに持ち上げて夢中で腰振ってたら途中からイクイクって絶叫してよがり狂っちゃって。まあ一度やれば一緒でしょって事で遠慮なく中に出し続けた。それからお互い、週末はホテルに入り浸り。
「ん、ぁっ、はぁっ……あっ、あん……ふぅ……っ♡」
男に跨り、夢中で腰を振り続けていたヴァレーは深く座り込んだまま後ろ手をつき、上体を反らして前後に身体をくねらせていた。その姿を見つめて、男は欲望を募らせていく。
——ああもう、何回か甘イキしてるくせに。ビクビクって震えて腰止まっちゃうからすぐ分かるって。あー、そんなんじゃだめだめ。またお腹と太腿ヒクつかせてエロい顔見せてる。理性飛ばして、雄のチンコ搾り取る事しか考えられなくさせてやらなきゃ。
「ヴァレーさん、お尻の中どう? 気持ちいい?」
「……ん、っ♡」
繋がったまま、首が数度縦に揺れる。
「でもさ、自分じゃタガ外せないでしょ? ぐずぐずで感度も良くなってきてるその状態で、俺に思いっきりシて欲しくない?」
疲れを色濃く残した薄金の瞳が、どんな想像をしたかは知らないがぐらりと揺れる。それと同時に、雄を咥え込んで離さない内壁がきゅうと締まった。
——交渉成立。
上体を起こしてヴァレーの腰に手を回すと、そのまま熱く柔らかな内壁を深く貫く。
「ん、うぅっ、ひゃあぁあ゙ぁっ?!♡」
「ヴァレーさんッ、甘イキしまくってたから中トロットロだよ。俺ずっと我慢してたから、あ、やべ、腰止まらねー……」
徐々に理性を失いつつある甘く濁った悲鳴が互いの鼓膜を心地よく震わせる。
「ひ、ゃあぁぁあっ!! ああっ、あっ……あん♡ んぅっ、んっ……あぁぁっ……♡」
腰砕けになっているヴァレーをじっくりと味わいながら、男は先ほどと同じ卑猥な想像に思考を埋め尽くしていった。
——ああ、俺の20センチサイズのデカマラがヴァレーさんのケツ穴にずっぼずっぼ出入りしてんのくっそエロいな。最初は経験ありのくせにそこそこキツかったのにさ。毎週のように掘られて縦割れのトロマンになっちゃって、これ他の男がいてたら絶対浮気バレしてるよね。
ふと、ベッドの横、大きなガラス戸の隙間から見える外の光景に目を遣ると、ホテルの下の街路に人影が見えた。
——あれ、さっきのあの男かな。ま、そんな訳ないけど。あ~でも誰でも良いからこの人のエロさ見せつけてやりてえな。
男はヴァレーの身体をぐいと持ち上げると、ガラス戸に近づいてカーテンを開けた。
「っ、貴方……っ!? 何ですか、っ、そんな場所で……!!」
抱え上げられ、我に返ったヴァレーは抵抗の言葉を放った。だが、持ち上げられて自由を奪われた身体では為す術もない。ガラス戸に密着させられ、太腿を持ち上げられたままM字に両脚を開かされる。ぱっくりと無防備に晒されたアナル目掛けて、男は背後から怒張を押し付けた。
「ひ、あぁ……っ!? も、ふざけないでください、っ、や、あんっ、あう、んぅっ……♡!!」
ヴァレーは顔を隠そうとガラス戸の前に手を翳した。窓に押し付けられた身体が、冷たさにひくりと震える。
「どう? 下のヤツこっち見てる? このまま部屋の電気点けちゃおうかな」
「やめっ、そんな、こと、やめてくださ、い、いやぁ……っ」
「嫌じゃないでしょ、すっげーきゅんきゅん吸いついてきてる。外の男に見られるかもって想像して興奮してんの?」
「そんな、こと……っ、ん、んんっ、ふぁ……っ、う、あ゙ぁぁあぁ〜〜ッ♡」
男はヴァレーの上体をぐっと持ち上げると、そのまま彼の自重を利用して奥の奥まで凹凸が嵌るよう、深々と重ね合わせた。そこから上下に激しく揺さぶり、無抵抗な身体を犯し尽くす。
——やべ……っ、擦ってるとナカ充血してくるのがはっきり分かる。うねって、熱くなって、ふっくら熟れて、トロットロに蕩けたケツ穴がチンコにやらしく媚びてくる。こんなとこパンパンに腫れるくらい男に使い込まれてさ。ヴァレーさん自身が知らない身体の仕組み、知らない姿、知らない顔も、もう全部俺だけのものなんだから。
「ここ、好きなんだよね?」
窓に押し付けたままの身体、その臍の下をぐりぐりと指で刺激する。問いかけても、もう、人間らしい声は返ってこなかった。そのまま挿入を続けていると、ごりゅっ、ごりゅっと竿の先端が内壁の向こう側を捏ね回す感覚が直接的に亀頭に伝わってくる。その度にビクンビクンと腸壁が収縮して、濁点混じりの喘ぎ声が辺りに響いた。
——今、部屋の電気つけても止めてなんて言えないんだろうな。まあ、変な奴に乱入されるのも嫌だし俺もそこまではしないけど。ああ、エロすぎてゾクゾクする。タマから精子ガンガン上がって来てる。やべ、もうだめかもしんない。
息をついて、自らの射精感を高めるために挿入の仕方を変える。根元までをより深く、強く、硬くなった竿を扱くように挿入口に出し入れする。その動きにヴァレーも何かを直感したのだろうか。振り返ると、男をじっとりと見つめた。
——うわ、こっちとろとろの目で見てきてる。今から出されるって分かってる顔だよこれ。あ、無理、もう出る。
「うぁ……出そう、も、中に出して良い? ぐ、ぁ……っ!!」
声にならない絶頂と共に、無防備な身体をガラスに強く押し付ける。欲の放埓を並々と注ぎ込みながら、輪郭線を無くしていく意識の中で男はこう思っていた。
——ああ、この瞬間をマイクロカメラ越しでナカ見られたらどんなにエロいだろうな。俺の種がヴァレーさんの赤く充血して熟れた綺麗な腸ヒダを汚しまくって白く塗り替えていく様子。一度でいいから職場のモニターに大写しで見てみたいや。俺の細胞、どれだけ頑張ってもどうせ全部死んじゃうんだからさ。大好きな人とせっかくひとつになれたのに。全く、可哀想な話だよ。