「今日は誰も居ないんですか?」
「ええ、朝から記者のお方には使いに行ってもらいました。それに、彼は未成年ですから貴方の思うような関係ではありませんよ。そう邪険になさらずに」
「今は、でしょう。血の指同士で仲良くしたって私には何の得もないじゃないですか。私の心は王朝への忠誠と、ヴァレーさん、あなただけに捧げているのですからね。それにヴァレーさん、私もう我慢の限界なんです……」
「先日は儀式だけでしたものね。ほら、部屋まではあともう少しですよ。フフ、しっかり我慢してくださいな」
ヴァレーはそう言って、調香師の男に先を促した。
そして男から漂う、彼の性格を表すかのような頭痛のしそうなほど甘ったるく重苦しい馨りをすぅ、と肺の奥に吸い込むと、そのままふうと吐き出した。
「——貴方にお会いするまで知りませんでしたが、香薬の世界というのもなかなか奥深いものなのですね」
「そんな! 私の趣味を気にかけてくださるなんて、本当にありがたいことです。先日お渡しした香薬はなかなか良い具合に調合できたと思っているんですよ。そう、チュべローズをベースにしているのですがね。ああ、あれは、ローズとは付いていますが月下香という花でして、薔薇の仲間ではなく竜舌蘭科の多年草なんですよ。それはもう、官能の粋を極めたような香りでして、そこに何を合わせようかとあれこれ考えていたのですがね、こと動物性の——」
ヴァレーは隣で繰り広げられる熱の籠った語りを、楽しみながらも半ば聞き流すようにして階段を登っていく。
話の内容自体には非常に興味深いところもあるのだが、なにぶん深入りしてしまうとそうそう手放してはもらえなくなる。
「——そういえば、ずっと気になっていたのですが、薔薇は、ヴァレーさんにとって特別な花、なんですか?」
半ば考え事をしたりして気を飛ばしてしまっていたのだが、ふと話題を振られたことに慌ててその意識を戻した。
「え、ええ。薔薇——ああ、薔薇ですか? そうですよ。特に鮮血のように鮮やかな赤い薔薇は、我が王朝を象徴する花でした。私自身の護身用の武器も、薔薇の花束を模した大変珍しいものだったのですよ」
「ほう、薔薇の花束の武器、ですか。ちょっと想像がつきませんが、それはそれは、ヴァレーさんに大層お似合いだったことでしょう」
「フフ、ありがとうございます。実は、私自身も、どのように使っていたのかまでは曖昧でしてね。武器というよりはむしろ、優美な工芸品のようであったとは記憶しているのですが——。もしかすると、あれは祭具か何かであったのかもしれません。いずれにしても、私はその記憶の故に、赤く美しい薔薇を我が王朝の象徴として敬い、愛でているのです」
「ヴァレーさんは本当に、心から王朝を愛していらっしゃるのですね……」
「ええ。それが前世からの、私の使命ですから。我が君主の再誕を、王朝の開闢を、ずっと、ずっと待ち侘びているのです。そうして貴方たちにも共に、そうあって欲しいのですよ」
ヴァレーは男の後に部屋に入ると、がちゃりと鍵をかけた。
「——さて、それでは。今日はどのようにされますか?あんまりお辛いようでしたら、先に一度抜いて差し上げましょうか?」
「は、はい、その方が良さそうです……」
「ウフフフッ、素直でよいことですね」
ヴァレーは男をベッドの縁に腰掛けさせると、その足の間にするりと身をかがめた。
そうして、男の膝に両手をつき、太腿までをすすす、とさすり上げると、足の間からその顔を見上げて、囁くような声音でこう言ったのだった。
「どこでして欲しいかは、貴方が決めてくださいな」
調香師の男は足元のヴァレーの目を見ると、彼が先ほどまでの王朝への思いを滔々と語り、信徒となる自らを律し、導いてくれた敬虔な使者の姿とは打って変わって、蠱惑的で扇情的な気配を纏い出した事に気付きごくりと唾を呑み込んだ。
普段の彼には決して言えないことや出来ないことでも、この部屋の中では全てが許されてしまう気がした。
「——その……口で、してください」
ヴァレーは熱の篭もった声で小さく、ええ、と答えると、男にこう促した。
「さ、どうぞ下穿きを脱いでください」
男は言われるがままに、着衣を膝の下へと降ろしていく。その間にヴァレーも、手を顔の後ろへと回して面を外し、ベッド横の小さなテーブルへと預けた。
ヴァレーの素顔が外気に晒されると、彼はふう、と息をついた。やや乱れた髪が顔にかかるのを払い除け、耳に掛けながら男の方へと向き直る。
上衣の隙間から見えている男のものは、もうしっかりと立ち上がっていた。
「おやまあ、さぞかしお辛かったようですね」
ヴァレーはくすくすと笑みを溢し、憐れむように言い放つと屹立してふるふると震えている男のモノに顔を寄せてじっとりと眺めた。
「ああ、それに、いつも綺麗にしてきてくださってありがとうございます」
熱の籠った吐息をわざと吹き掛けるかのように顔を近づけてそう囁く。
男がヴァレーに目をやると、彼もこちらを見つめ返した。もしかすると、彼も自分との行為を楽しみにしてくれていたのだろうか、と都合の良い事を懸想してしまう。
「い、いえ……こんなところにしてもらうなんて……だから……」
ヴァレーはそれを聞くと、徐に自らの口内を指さしてこう言ったのだった。
「貴方がここに挿れたいと、先ほどそう仰ったばかりでしょうに」
「っ?! は、はい……」
「恥ずかしがらなくても良いのですよ、今ここにははもう、私たちしか居ないのですから」
ヴァレーの口から、またくすくすと笑みが溢れる。男は、自らの顔が真っ赤になっていくのを感じた。
——そう、この人のこう云うところに私はズブズブと嵌ってしまったのだ。
初めは口淫なんてとんでもない、と思っていた。しかし、彼と身体を重ねていくうちにあることに気がついた。
時に理性のタガを外し、自身の醜い欲望を曝け出してしまっても尚、彼はそれ故に行為の拒否をするということはなく、むしろ苦笑いをしながら「貴方はこういう事がお好きなんですね」と受け入れてくれたのだった。
そのうちに、この人は自分が望む限り、どんな醜い欲望でも受け止めてくれるのではないかと思ってしまった。
そうして、自分でもどこかで歯止めをかけなければと思ってはいるものの、歪んだ執着と妄想は留まるところを知らず、いつしかすっかり彼の身体に依存してしまったのだ。
「ウフフッ、少し意地悪が過ぎましたね」
ヴァレーはそう言うと、親指と人差し指で囲い込むように男のモノの根本を軽く抑えると、長い舌をべ、と突き出してそのままべろりと男の竿に這わせた。
「〜〜〜〜!!」
男は、その刺激だけで達してしまいそうだった。
「っ、ふ、私にされるのが、そんなにお好きなのですか?」
ヴァレーはそう言うとまた舌を這わせ、反応を楽しむように男を見上げながら、べろべろと唇と舌を巧みに使って竿を根元から先端へと舐め上げていく。
男は口元を抑えて天を仰ぐと、その快感を耐えるために身体を強張らせ、ぶるぶると身悶えた。
すぐにでも射精してしまいそうだったが、こんなにすぐに出してしまっては勿体なさすぎる——。
全身に力を入れて射精感を逃しつつ、なんとかやり過ごすと足元のヴァレーへと目を向けた。
彼も性急に追い立てるつもりは無いためか、しっとりとした動きでペニスに舌を這わせながら、ゆらゆらと腰を揺らしている。
べろ、れろ、といきり立ったモノを丁寧に舐め上げながら、何度かうっとおしそうにヴァレーは髪をかき上げていた。男が代わりにその髪を手で抑えてやると、彼の目が、ああ、助かります、と言いたげに細められたのだった。
男はその献身的な姿を見て、己の嗜虐心がむくむくと鎌首をもたげていくのを感じた。
こうして慈しむようにゆるゆると舐め上げられるだけではなく、今すぐに己のモノを全部突き挿れて、その取り澄ました顔を苦痛に歪ませて涙を流させ、手酷く犯したい。
そして、この人はきっとそれを許してくれる。
髪を抑えていた男の手に、ぐっと力が入る。
男はヴァレーの頭を掴むと、ぐいぐいと先端の方へと誘導していく。ヴァレーはその強引な仕草に少し眉根を寄せたが、さして抵抗することもなく男に主導権を委ねた。
(……そろそろ、彼も我慢ができなくなってきた頃でしょうか……?)
男は先走りに濡れていた自らの先端へヴァレーの口をぐにゅ、と押しつけると、そのまま一気に自らのペニスを彼の口内へずるりと押し込んだ。
ヴァレーは無理矢理に口に押し込まれたモノの質量で呼吸が苦しくなり、その表情を歪めてしまう。
「んっ、んぐぅ、んうっ……!」
そして突き込まれたモノにむしゃぶりつくと、男の顔を蕩けた目付きで見上げ、決して歯を立てないように舌で裏筋をざらざらと擦り上げ、じゅぼじゅぼとわざと大きな音を立てて竿を強く吸い上げていった。
男はそのあまりにも倒錯的な光景にクラクラした。ヴァレーのその咥え込んでとろけた顔は、抑え込んでいた男の嗜虐心をいっそう酷く揺さぶり、男はもう己の欲望を今すぐその口の中にぶちまけてしまいたかった。
「はぁっ、……あっ、ヴァレーさん、すみません、っ!!」
もう我慢が出来ない。男は両手で彼の頭を押さえ込むと、一気にどちゅんと喉奥までペニスを突き挿れた。
ヴァレーの身体は喉への強烈な刺激と嚥下反射でビク、ビクンと跳ね、目からは涙が溢れた。
「っゔ、あ゙ぐっ、んっ、むぐっ、」
(喉っ、苦し……ッ……)
男からは見えていなかったが、頭を掴まれ、無理矢理に喉奥を犯された時にヴァレーは軽く達してしまっていた。
喉奥にペニスを突き挿れられながら、男が自らの身体を浅ましく求め、蹂躙しているという状況に酷く興奮してしまったのだ。
(これは……っ、下……脱いでおけばよかったか、も……っ)
男の動きは更に激しさを増し、じゅぼじゅぼと喉奥を容赦なく犯していく。ヴァレーは吐精後の脱力感の中で、喉を痛めないようにうまく律動を逸らしつつ、また喉奥を締め付けながら相手の動きに身を委ねた。
「うぅ……っ、ヴァレー、さんっ、もうっ、出そうですっ!、!あっ……」
射精の合図があると、ヴァレーは男のペニスを喉奥から口内へと戻した。
頭を掴んでいる男の手に一際力が込められたかと思うと、男の精液が口の中にびゅるびゅるびゅると放たれていった。
「んんっ、んぐっ、んっ……」
(やっと、出た……ぁ……)
男のペニスが吐精の余韻でピク、ピクと震える。
ヴァレーは口の力を弱めると裏筋を吸い上げ、最後の一滴まで絞り出すように根本を指で扱くと、先端からぷちゅ、と音を立てて口を離し、その顔を上げた。
男は脱力しきって力なくベッドにへたり込んでいたが、やおら口を開くとこう言った。
「う、ヴァレー、さん……それっ、見せて……っ」
ヴァレーはその要求に少し困ったような顔をしたが、男に向けて白濁塗れの真っ赤な口内をべ、と晒すと唾液を絡めて、んぐ、と一気に飲み下した。
つん、と精液の独特な臭いが鼻に抜ける。
「——ふ、ぅ。今日はまた一段と溜め込んでいらしたようですね」
男は返事もできず、まだ肩で息をしていた。
「——今日のところは、これで終わりにしましょうか?」
男は、ぼんやりと聞こえてきたその問いかけにぶるぶると頭を振った。
「フフ、そうですか。貴方がそのつもりなら、まだまだ楽しめそうですね」
ヴァレーは自らも吐精で汚れてしまった下穿きを脱ぎ捨てると、横たわる男の上に乗り上げて達したばかりのペニスを足でくにゅ、くにゅ、と刺激していく。
しばらくすると、男のものがまた芯を持ち始めた。
「ああ、先ほどお話しされていたこちらも、試してみましょうか」
ヴァレーは先日男が持参していた香薬を手に取ると、その瓶の蓋を開けた。
しゅわしゅわと蒸気が漂い出して香りが部屋の中へと広がっていく。その官能的な香気に当てられると、先ほどまでの気怠さはすうっと吹き飛び、身体がえもいわれぬ多幸感に包まれていった。
香薬の瓶の底に溜まっていた香油も軽く男の腹の上にトロトロと垂らしていく。
そこから立ち上がる芳香も楽しむと、香油で滑りを良くしてさらにぐりゅ、ぐりゅと足で男のペニスを刺激をしていった。
「まあ。お若いからかこの香薬の作用か、回復も早いようですね。これだけ固さもあれば、大丈夫でしょう。ふふ、お次はどうされますか」
調香師の男は、熱っぽい瞳をヴァレーに向けて言う。
「私の上で、乱れてくださいませんか」
ヴァレーはその瞳を左右に揺らめかせながら、こくりと頷いた。
「——ええ、仰せのままに」
ヴァレーは上衣をする、とたくし上げて男に跨ると、自身の腰をゆっくりと男の身体に落としていく。
上衣のせいで男から結合部は見えなかったが、まだ慣らしていないそこはやや抵抗が強く感じられた。
「あ、後ろ、っ大丈夫、ですか?」
「ご用意してくださったもので、滑りもよいですから、ん、ご心配、なく、っ」
ヴァレーはやや顔を歪めながら、男に自らの身体を沈めていった。ぬる、ぬると尻の割れ目を押し付け、先端がつぷんと入ると、後は自重に任せて一息に腰を下ろした。
「——っゔっ、……はぁ、……っは……ッ」
ビリビリと脳天へ甘い痺れが貫き、腹の中をみっちりと押し広げるペニスの形がありありと感じられ、身体が痙攣する。
実のところ、ヴァレーの体の疼きももう我慢が出来ないほどで、直ぐにでも後ろに刺激が欲しかったのだ。
男はその様子を満足そうに見届けてこう呟いた。
「今、私のもので感じていただけているのですね?」
「……っ、ええ。もちろん、です、っ……!」
「ああ。どうか、高潔なあなたが私の上で淫らに快楽を貪り、乱れる様を見せてください。私だけに見せるその姿を、この目に焼き付けておきたいのです」
「ッ……ふふ……そこまで仰らなくとも……」
ヴァレーは口元に手を掛けて苦笑すると、やや伏し目がちに上体を揺らしていく。
はぁ、と熱い吐息が漏れる。
先ほどから疼いて仕方がなかった場所なのだ。
一度快感を拾い始めると、自分でも歯止めが効かずにぐりぐりと腰を動かしてしまう。
「あ゙っ、……く、ゔ……っ、は、ぁッ……」
むせ返るような甘く官能的な馨りの中で、思考もどろどろと溶かされていく。腹の奥がじくじく疼いて仕方がない。ヴァレーは夢中になって、男のペニスで自らの性感を擦り上げていった。
ぐちゅっ、ぐちゅっと、香油と二人の体液とが混ざり合い、卑猥な音を立てる。
ヴァレーは前立腺に擦り付けるようにと、前後に腰を揺らしていたが、段々と激しく、さらに奥へと突き入れたくなり、上下に腰を動かし始めた。
男は自らの上で乱れるその姿にほう、と見惚れていた。
今彼をよがらせているのは自分のモノなのだと思うと、更にそこに熱が集まっていくのを感じた。
ヴァレーが他の者にもこういった行為を許している事は知っている。その身体に残された情交の時に出来たであろう鬱血や爪の痕を見てしまうと、男は嫉妬の念に駆られて頭が真っ白になり、いつも行為どころでは無くなってしまうのだった。
そんな男を見て、いつしかヴァレーは彼と交わる時には上衣を身に付け、出来るだけ人払いをするようにした。
そのあまりにも強い自分への執着が、いつか彼の身を滅ぼすことにはならないだろうかと小さな不安を抱えながら。
ばちゅん、ばちゅんと肌のぶつかる音が響く。
ヴァレーは全身の突き抜けるような快感に悶えながら、その一方で腹の奥のじくじくとした疼きに苛まれていた。
——あと、あと少し。
相手の力を借りなければ、自分だけでは最奥まで貫くことができない。この体の交わりは決して自己満足ではなく、それは相手にこの身を求められて初めて成り立つ行為であり、それ故にこの身体の疼きを抑えることができるのだ、と自らに言い聞かせる。
ああ、でももう、そんなことはどうでも良い。
どうにか早く、この身体を隅々まで求めて、ドロドロに犯してもらわなければ。
やはりこの香りのせいだろう。きっとそうなのだ。いつになく思考が甘く焼き溶かされてしまう。腹の中も香油の成分が悪さをしているのだろうか、擦るたびにびりびりと甘く痺れてどうにかなってしまいそうだ。
もはや自分でももうどんな顔で、何を言ったかさえも分からなかったが、堪えきれなくなって男を煽るように言葉を放った。
「——っ、はぁっ……先ほどから……っ、見ているだけで、良いんですか? ——ねぇ、私の貴方っ…………!」
その姿と台詞は男の理性を吹き飛ばすには十分な威力を持っていた。
「……っ、ヴァレーさん……! 他にもいるくせに、あなたはっ、ほんと悪いひと、ですね……」
調香師の男が余裕を失った、嫉妬と劣情と欲望を剥き出しにした顔で言い放つ。
「——もう、優しくはできませんからね」
男はヴァレーの上衣の下に手を差し入れて腰を両手でガッチリと掴み、自らの上体を起こすと、そのまま一気に引き寄せて自らのものを突き上げた。
「〜〜〜〜〜っ゙っ゙!!!、ゔあっ、そこ……っ゙」
ヴァレーの身体がビクンビクンと跳ねる。
ペースを男に乱され、自重だけでは届かなかった奥への快感がビリビリと身体を襲った。
男は片方の手で腰を抱き込み、もう片方で背中を押さえると耳元で何度もヴァレーの名前を呼びながらどちゅ、どちゅんと最奥を穿っていった。
密着した姿勢でいっそう奥をぐぽぐぽ、ぐちゅぐちゅと抉られ、相手に主導権を握られると、下腹部から伝わる強烈な甘い痺れに全身の感覚がなくなるほど支配され、一気に腰砕けになってしまう。
「は、あ゙、あ゙……も、っむり、……っあ゙っ、」
「はっ、そのカオっ、絶対っ……誰にも、見せな、で……っ、」
男が余裕のない声で言った。
「あ、もうっ、出る、出るっ!中、だしてっ、良いですか?!っ、」
「……っぁ、はきだして……っ、ください、っ……! 貴方のぜんぶ……うけとめ、ますから、っ、」
「ヴァレーさん、っ……! 今だけは……っ、私のもの…で、」
「〜〜〜、〜〜っ゙!、!!」
二人は同時に果てると、そのままどさりとベッドの海へ沈み込んでいった。
◻︎◻︎
「貴方、それ」
ヴァレーが驚くような、呆れるような、半ば絶望したような顔で男を見る。
「すみません、っまだ、収まらなくて……」
男は真っ赤にした顔を両手で抑えている。彼のペニスはまたガッチリと立ち上がり、萎えるところを知らなかった。
「香薬の催淫作用のせいですよ……!! 全部出し切るまでどうか付き合ってくださいっっ!!」
男が泣きついた。
身体の疼きも収まり、すっかり気を取り戻したヴァレーは目の前の光景と男の言葉に戦慄した。
「いやいやいや、香薬は貴方が調整したものでしょうに。少し休憩を入れられてはどうですか? 私も一度身体を清めたいですし、もしくは、また日を改めては……」
ヴァレーは青ざめた顔で相手をたしなめ、じりじりとベッドの上で後退った。
「こんなガチガチの状態でどうやって休憩しろっていうんですか!? 責任取ってくださいよっ、!!」
男は逃してたまるものかと覆い被さると、まだ白濁塗れの尻に自らのモノを突き入れた。
「〜〜〜?!!! ま、って、まだ、さっきのっ、イッたばかりで、続けては、むりですっ、て、あ゙、こわれ゙、るっ」
「終わるまで絶対に離しませんから!!」
「〜〜゙〜〜、゙〜!!!!」
ああもう、あなたを永遠に私だけのモノにしてしまいたい——。
勢いに任せて身体を重ねながら、チクリと男の指が痛んだ気がした。