慈悲か慈愛か③(r18)

 

「ほら、今日も可愛がってやるからな!!」

「う、あ゙あっ、いや、ひ、い゙あぁぁ゙ぁっ!!」

囚われた身から発せられる痛ましい声、そして肌を打つ音が、独房内に絶え間なく響き渡っていた。
虜囚となったヴァレーの身体は大柄な兵士に組み敷かれ、開かれた双臀の谷間にはでっぷりとした下腹が幾度も激しく打ち付けられて出入りを繰り返す。兵士から迸る汗の飛沫が辺りを濡らし、その肌からは薄く湯気が立ち昇っていた。男の腰が沈められる度、苦しげな呻きがヴァレーの喉奥から押し出されていく。

「うっ、うぐっ、ぐ、あ゙、っ、は……っ」

「お前、おっさんのくせにココの具合最高じゃねえか……! 狭くて熱くて、入り口ぎちぎち締め付けやがって……!!」

「痛い、いや、やめてくださ、っ、は……っ、あ゙ぁぁぁぁあっっ!!」

「うるせえっ、黙れ! このっ!!」

バシンと平手を打つ音が聞こえ、ヴァレーの横っ面が兵士の手に強く弾かれた。小さな悲鳴と共に、瞳がぐるんと上を剥く。彼はその衝撃に軽い脳震盪を起こしてしまったのか、ぐらりと力を失った。体勢を崩した身体は兵士の筋肉質な両腕によって支えられる。

「ふん、やっと静かになりやがったか」

男は鼻を鳴らすと、物言わぬヴァレーの身体に再び巨体をずぶずぶと沈めていった。欲に任せた猥雑な揺さぶりに合わせ、結合部はぐちぐちと陰湿な音を立て始めていた。兵士の恍惚とした唸り声、下卑た笑みが荒い吐息に混ざり、独房の中に響き渡る。次第に男は雄叫びを上げながら、夢中になって腰を振る速度を早めていった。一定の感覚でパンパンと響く尻を打つ音、兵士の下半身からぶるんと赤黒く突き出した雄の怒張が、ヴァレーの肛腔をぐぽん、ぐぽんと拡張していく。肩上に持ちあげられ、晒け出された尻の合間には、薄っすらと紅い鮮血が伝っていた。

兵士らの度重なる蹂躙に、虜囚となったヴァレーの身体はとうに悲鳴を上げていた。それは暴力による失神、そして、繰り返される凄惨な陵辱の故だろう。先程の殴打によって一時的に遠のいていた意識は、体内を抉られる断続的な痛みにより、再び覚醒させられようとしていた。
ぼんやりと開けゆく視界。そして、認識を取り戻していく頭。未だ何者かに揺さぶられ、押さえつけられ、内部を犯される感覚が身体を襲っている——。
ヴァレーはぼんやりと霞む視界の中、目の前の影に焦点を合わせた。

だが、行為を愉しんでいたのは、先程の男ではなかった。気を失ってからどれほどの時間が経過していたのかは分からなかったが、ヴァレーの身体はもう既に、別の兵士によって陵辱されていたのだ。
その事実に気付くと、彼は愕然として、震える声で呟いた。

「も、……いや、離し、て……」

ヴァレーは健気にも、自らを犯す兵士が入れ替わる度に行為の中断を訴えていた。だが当然の事ながら、誰ひとり彼の言葉を聞き入れる者などいなかった。
哀れな望みは嘲笑の的となり、欲の捌け口となった身体は行為が終わると冷たい岩の床に打ち捨てられた。だが、休む間もなく次の兵士の声が独房内に響き渡る。

「おい、終わったならさっさと行け! こっちはずっと待ってるんだからな、早く交代しろよ。おい、お前も休んでる暇なんかねえぞ! 起きろ! あー、ったく。ザーメン塗れでケツの穴ドロドロじゃねえか。きったねえな。……お前、名前はヴァレーだったな? なあ、こっち見ろよ。俺の事、覚えてるか? あの時はよくも相棒を殺そうとしてくれたよなあ?」

新たな兵士は地面にしなだれて横たわったままのヴァレーの前にしゃがみ込むと、髪を掴んで彼の顔を引き上げた。ヴァレーは冷たい岩肌に伏せたまま身を震わせていたが、ひりひりと灼けつくような下半身の痛みに気を飛ばす事すら出来ずにいた。兵士に向けさせられた顔、そして先程の言葉を聞き、ヴァレーは目の前の男を思い出していた。

今目の前に居るのは、かの洞窟でヴァレーを襲撃した、あの兵士。たった数日前の出来事であったが、それは今や遠い記憶のように思われた。だが、そうした相手と知っても尚、ヴァレーはこれ以上の汚辱には耐えられないとばかりに訴えかけた。

「っ、ぁ……後ろ、が、も、痛くて……っ、貴方、お願いですから……っ、こんな事は、おやめください……」

震えながら、縋るように手を伸ばす。苦痛と恥辱に、涙が堪えきれず目の縁を伝って溢れ出していく。尻の穴からは繰り返される陵辱の末に吐き出された名も知らぬ兵士の精液が、みっともない音を立て、ごぽ、ごぽっ、と溢れ出していた。

さぞかし無様な姿を晒しているのだろうという思いがヴァレーの脳裏を掠めたが、恐怖と痛みに屈服した頭は終わりなき卑劣な行為をどうにか拒否する事だけを求めていた。
だがその願いも虚しく、兵士はヴァレーを力任せに押し倒して組み敷くと興奮した笑みを浮かべてこう言った。

「はあ? やめろだと? 何を言ってやがるんだ。元々はお前が相棒を殺そうとしたのが悪いんじゃねえか。ま、自業自得、ってやつだよな。それにあの時、お前は殺されまいと、命乞いの交渉をしてきやがった。で、俺らのおかげでこうしてまだ生きていられるんだろう? 感謝されても良いぐらいだ。俺がお前を愉しむのは、当然の権利ってやつさ。ほら、俺のモノが見えるか? 今からコレを、じっくり堪能させてやるよ。今後の付き合いが楽しみだな」

「……ぁ、ひっ……い、や……」

這いつくばり、無意識に身体を逃がそうとするヴァレーの姿を、兵士は背後から引きずるように引き寄せた。そして後背位の姿勢でヴァレーに覆い被さると、いきり勃った陰茎を尻の谷間にぬるぬると擦り付ける。男は他の兵士らの白濁に汚され、散々に使われて哀れにヒクついている処理穴をじっくりと眺め回すと、その中心目掛けて深々と強欲を穿ち込んだ。

「っ、ゔ、ひぁ゙ぁぁっ、やめっ゙、あ゙ぁっ、ゔぁぁぁ゙っ」

無理矢理に捩じ込まれた男の欲はヴァレーの肛腔に内臓を引き攣れるような鋭い痛みを与え、喉奥から悲痛な喘ぎを溢れさせた。傷ついた内壁は繰り返される力尽くの摩擦に爛れて充血し、熱くぬるついている。その腫れ上がり、狭くなった腸壁が意図せず男の陰茎を強く締め付けていく。

「うおっ?! ぬるぬるでぎちぎちであったけえ……!! ああ、これがいつでも使い放題だなんて、軍医ケツマンコ最高じゃねえか……! やべえ、すぐにでも出しちまいそうだ……ッッ!!」

「中、も、出さな……で……っ、いや、あ゙、あ……ぁ……!!」

ほぼ無意識のうちに、ヴァレーが悲鳴を上げるように放った拒否の言葉。それに男は耳ざとく反応すると、腰の動きを止めて声を荒げて捲し立てた。

「なんだ? お前、口ごたえするってのか? ふざけやがって。なら、俺が一人前の肉便器に躾けてやるよ。お前が言うのは『使ってもらってありがとうございます』だろ? ほら、早く言えよ。……なんだ? 言わねえならどうなるか、虜囚の立場ってやつを分からせてやろうじゃねえか」

男はヴァレーの背後に自らの怒張を突き立てたまま、置かれていた鞭を取ると目の前に晒されていた背中を強く打ち据えた。男の一振りごとに、薄布が捲り上げられた裸体には真っ赤な痕がビュンと走る。振り抜かれる鞭の痛みは耐え難く、それはたった数回で、ヴァレーの意志を挫くに充分すぎる程の効果があった。

「はは、ぶってやったらケツの穴良い感じに締め付けるじゃねえか? 感じてやがるのか?」

「あ、ぐぁ……っ、ぎぃあぁぁぁ……っ!! 痛っ、痛いッッ……!! も、やめてくださ……い……分かりました、分かりましたから……!!」

背中を真っ二つに引き裂かれてしまったのではないかと錯覚するほどの鋭い痛みに、ヴァレーは全身をわななかせて絶叫に喘いだ。そして次の一振りがヒュッと耳元を掠め、身体に振り下ろされる前に——自ら反射的に、こう叫んでいた。

「ぁ……わ……私の身体を使っていただき……、ありがとうございます……ッッ!」

「ほおう。それだけか? 他にも何か、言う事はねえのか?」

「……貴方の……気が済むまで……っ、どうぞ好きなだけ……この身体を、お使いください……」

ヴァレーは震える身体で、どうにかそう絞り出した。

「いや、まだだな。さっきの口ごたえには、どう落とし前をつけるつもりだ?」

男は再び鞭をヒュンと空にしならせた。その音ひとつで、ぶるりと身体が硬直する。だが、続く言葉には流石にヴァレーにも躊躇いがあったのだろう。
それでも観念したように、彼は消え入りそうな声でこう応えた。

「……いえ、あれは……っ……間違いでした……っ、……私、の……私の中に……貴方のものを……ぜんぶ、出してください……」

ヴァレーの目からは与えられた痛みと恥辱に涙が押し出され、顔は様々な体液によってぐしゃぐしゃになってしまっていた。それを覆い隠すよう、彼は腕で顔を塞ぐと力なく俯き嗚咽を漏らした。

「ほおう。ま、そう言われちゃ断れねえよな。よし。ならさっきの続きといこうや。『お前が』中に出せってねだったんだからな? お望み通り、タマん中空になるまで出してやるよ。覚悟しやがれ」

その言葉と光景に満足したのか、男は手にしていた鞭を放り投げた。ガランと音が鳴ると同時に、ヴァレーの腰肉ががっちりとわし掴みにされる。嗜虐心を最大まで煽られた男の顔は愉悦に醜く歪んでいた。結合部を介して繋がったままである身体は、再び激しい抽送に揺さぶられる。
兵士の欲を満たすためだけに使われる身体。内壁のヒリついた痛みが脳髄の神経を直に響かせた。ヴァレーは痛みに喘ぎながら身体中をしならせて力を込め、繰り返し与えられる苦痛にどうにか耐え続ける他はなかった。

「……んっ、ん、んんっ、あ、ふぁぁぁあっっ…!!」

「……うっ、クソッ……!! 出るぞ、出るぞ……っっ!! っあっ、ぐあ、ほら……! お望み通り、一滴溢さず呑み込め……っっ!!」

「……ぁ、あぁ……っ……は、ぁ……」

男はひたすらに快楽を貪り自らを高めると、溜め込んだ欲望をヴァレーの体内へと注ぎ込んだ。ビクッ、ビクンと張り詰めた亀頭の先端から精液が放射される度、小刻みに震える陰茎の独特な感触がヴァレーの内腔へと伝わっていく。ひりつき、過敏になった腸壁はまた、男の体液がどろどろと流れ込む感覚を巧みに拾い上げていた。尻を突き出した体勢で直腸内へと放たれるそれは腸壁の蠕動と重力に従い、腸腔の奥へ、奥へと送られていく。

男の宣言通り、その有り余る欲が空になるまでヴァレーの身体には猥褻な行為が続けられた。体内に兵士の欲が放たれる度、ヴァレーは自らが性的な処理用の容れ物に成り下がってしまったのだという事をはっきりと自覚させられ、虜囚としての屈辱的な意識を着実に刻み込まされるのだった。