慈悲か慈愛か④(r18)

 

——虜囚としての生活が始まって、どれほどの月日が経ったのだろうか。

ヴァレーは部隊に所属する全ての兵士をその身体で知り、特徴を覚え、癒す役割を一身に担っていた。初めこそ、ヴァレーは四六時中泣き叫び抵抗を繰り返したが、この場所ではそうした全てが無駄だということを深く刻み付けられた。
僅かに訪れる休息、虚ろに光を無くした瞳で独房の岩壁を見つめる中、ヴァレーはいつしか自らの身体が壊れ、終わりを迎えてしまうことすら望むようになっていた。だが幸か不幸か、人体とは想像以上に丈夫なものであるのだと、彼はその身を持って思い知ることとなる。
兵士たちとの度重なる性交に明け暮れた身体は、数え切れぬほどの異物を受け入れた。傷付いた内壁は癒えるたび、男たちの肌へと馴染んでいく。ヴァレーの身体は痛みを逃すための動きを無意識のうちに覚え、抵抗に頑なだった挿入口は、今や弛緩して外部からの侵入を甘んじて受け入れるようになっていた。兵士たちにとってもヴァレーの順応性は予想以上のものだった。中には「過去に男とまぐわった経験があるのだろう」と、彼を嘲る者も居た。

ヴァレーに訪れていた変化は、そうした身体的なものだけではなかった。兵士らの欲望で腹の中をずちゅずちゅと掻き回され、直腸内を埋めていた熱い欲望がどろりと引き抜かれる瞬間に——ゾクゾクとした開放的な性感が全身を貫き、駆け巡るようになってしまっていた。それは痛みとは対極の感覚。くらりと意識が遠のく程の、性的な悦楽だった。
こうして男たちに虐げられ、欲の捌け口として隷属的に嬲られているにもかかわらず、身体は背徳的な官能に染まっていく。
暴力的な痛みや恐怖に晒され続けたヴァレーの脳は、過酷な環境下におけるこうした快楽刺激をある種の「報酬」だと受け取ってしまったようだ。下半身に絶え間なく与えられる情交の刺激は、今や彼の脳内麻薬を多量に溢れさせるためのトリガーとして機能してしまっていた。それはヴァレーの身体が無意識のうちに会得した、直視に耐えない現実からの逃避だったのだろう。

「……っ……ぅ……」

遠のく意識から目を覚ます度、目に入るのは変わり映えのしない鉄格子。
この瞬間、ヴァレーは自らの置かれている現実が夢でないと知り、暗澹たる感情に見舞われた。身体そのものは男と交わる事にも慣れ、与えられる快楽を受け入れてしまっている。だが、彼の正常な理性は、囚われて解放される見込みもなく、ただ犯され続けるだけの状況を酷く嫌悪していた。
ヴァレーは自らの肢体に、ぼうと目を落とす。虜囚としての身体は薄布を纏う事のみを許され、足首は逃げられぬよう鎖に繋げられている。露わにされた皮膚には鞭打たれた痕や、兵士らに付けられた様々な暴行の痕があちらこちらに残されていた。
半身を捩ると、下腹には筋肉痛のような鈍重な痛みがズキズキと響く。ヴァレーはそうした不快な感覚に眉根を寄せると、壁にもたれかかったまま天井を見上げた。

——自発的に眠りから醒めたのは、一体いつぶりの事だろうか。気絶し、疲労のうちに意識を落とした身体は尚、男たちの気の済むまで使い続けられる。そうしていつ、何が終わり、また新たに始められたのかも分からぬまま——男たちの肌の中で目を覚ますのだ。

覚醒していく意識と同時に、ひりついた喉の渇きを強く感じる。この独房内には、食料はおろか水さえも置かれてはいない。ヴァレーが何らかの生理的な欲求を満たすには、ここから鐘を鳴らし、外にいる兵士らを呼びつける必要があった。だがそれは即ち、欲に飢えた獣を招き入れてしまう事と同義である。ヴァレーはいつぶりかの静寂に身を委ねられる貴重な時間を、まだ手放したくはなかった。だが、静寂ではこの喉の渇きと空腹を癒す事などできない。しばらくは微睡の中でうつらうつらとしていたが、いよいよ観念すると重い腰を上げ、目の前の紐を手繰り寄せた。

独房の外にガラン、ガランと鳴り響く、号令にも似た合図の音。
ここに来て何度も聞いた筈の、その音を耳にした瞬間——。ぞくりと感じた事のない奇妙な感覚に支配された。

「——ッ……!?」

それは全身が瞬間的にカッと火照るような、甘やかというには淫猥に過ぎる身体感覚。次の瞬間、ヴァレーの脳裏には一つの光景が現れていた。
四つん這いの体勢で背後から男に貫かれ、大きく背をのけ反らせて喘ぐ自らの声。正常位で男を受け入れ、その背に足を絡めては一心不乱に腰をうねらせる姿——。

「……これ、は……?」

ヴァレーは脳裏に浮かぶ衝撃的な光景に、咄嗟に口元を抑え狼狽えた。
——今のはここに来て味わった悪夢、それらの行為から想起された幻覚なのだろうか?
だが、相手の男はここの兵士ではない。男の顔は判然としなかったが、なぜか明確に、そう思った。
最後に見えた光景は、一際グロテスクなものだった。
ヴァレーは両端に立っている男のペニスを左右の手でそれぞれに扱き、竿から放たれる精を顔面で受け止めていた。正面に立つ男には頭を掴まれ、なす術もなく口淫をさせられている。更には、地面に横たわる男の腹の上にしゃがみ込み、屹立した怒張を自ら体内に受け入れていた。四人もの男の中心で恍惚として快楽を貪る姿は——まるでセックス中毒者の成れの果てのようだった。

「——そんな……事、は……っ……」

卑猥な幻覚を頭は否定していた。だが、熱を上げる身体は鎮まらない。身に覚えのない自らの痴態に戸惑いを隠せずにいると、鐘を聞きつけた兵士が独房に踏み入る音がした。

「おう、ようやくお目覚めか? どうだ、ここでの生活にもそろそろ慣れてきただろう。充分な広さの個室に、こうした身の回りの世話。衣食住には何も困らねえ。虜囚のくせに、破格の待遇だろ? ああ、何か用だったな。腹が減ったのか、それとも、水か?」

目の前に現れたのは、この部隊の長官だった。男は大股にヴァレーに近づくと、食料と水の入った袋を簡素な寝台の上へと放り投げる。
ヴァレーは先ほどの幻覚をどうにか振り払うと、男が投げ渡した皮袋の水を無心で飲み干した。

男は寝台に腰掛けると、ヴァレーの隣で意気揚々と語り始める。

「今日は凄かったぞ。十人以上の首を刎ねて耳を引きちぎり、首輪のように繋げてやったんだ。頭は目玉から串刺しにして領境に並べてな。ああ、圧巻だったぜ。今度、お前にも見せてやろうか。俺は前線で闘ってる時が、最も生を実感するんだ。この戦は誰がおっ始めたのかしれねえが、一発逆転、俺みたいなヤツがのしあがるには絶好の機会さ。ただ戦いに勝ち、生き残るだけなんだからな。この場所では、身分も出自も関係ねえ。『力』だけが全てなのさ。そうだろう?」

長官は差し入れた袋に手を突っ込み肉の塊を引き出すと、獣のように噛み付いて食いちぎった。

「……それに、今はこうして新たな『お楽しみ』もあるときた。やっと、ツキが回ってきたんだろうな。俺の目に、狂いはなかったって訳だ」

そう語る手はヴァレーの腰を撫で回すと、そのまま尻を揉みしだいた。ヴァレーは無言のまま、男の手つきにビクリと身を強張らせる。
——ヴァレーをこの部隊の性奴隷にすると決めたのは、この男だった。長官はヴァレーの事を、その身体の具合含めていたく気に入ったようだ。虜囚の身であるヴァレーにそれなりの待遇が用意されているのは全て、この男の計らいによるものだった。

長官はもう片方の手でヴァレーの手を引き寄せると、自らの滾る股間に押し当てて言う。

「……雑談は終わりだな。どうだ? 戦で昂ったモノはなかなか鎮まらねえ。ほら、今にも爆発しそうだろ。今日はどう処理してもらおうか。え? 俺たちの可愛い軍医さんよ」

ヴァレーはどうにか嫌悪を顔に出さなかったのだが、この長官の行為は長々と粘質で、とりわけ苦手に感じていた。だが、男が誇示したように「力」では到底、敵うわけもない。半ば観念したように握らされた長官の股間の膨らみを服の上から扱きあげると、男の股間にゆっくりと顔を埋めていった。

「……そうだ。お前も分かってきたじゃねえか」

その動きに合わせるよう、男は下穿きの前をべろんと寛げる。ヴァレーの鼻先には、はち切れんばかりの男の陰茎がぶるりと弾力を持って飛び出した。そう、この部隊の中でもこの長官のペニスは、ひときわ異質な見た目をしていた。男のものは太さもさることながら、その長さも相当に規格外だった。

「……ひっ……、は、ぁ……っ」

グロテスクな光景、むわりと立ち込める濃い雄の臭いに、ヴァレーはクラクラと眩暈がした。赤黒く怒張した竿には脈打つ血管がビキビキと大樹の枝のように張り巡らされ、天を衝く充血した先端の割れ口からは、男の体液が雫のように染み出していた。幾度もそれに貫かれていながら、毎度生娘のように言葉を失ってしまうヴァレーを見下ろすと、男は口角を醜く吊り上げる。

「——舐めろ」

一言、短い命令が発せられた。長官の命令は絶対だ。だが、丸一日戦場を駆け巡った男の陰部から放たれる蒸れた臭いに耐えかね——ヴァレーはつい顔を背けてしまった。

「なんだ? 嫌だってのか?」

投げかけられる不機嫌な声。ヴァレーは男を見上げると、力なく左右に首を振る。逆らって、さらに酷い事をされては堪らない。ヴァレーはどうにか吐き気を堪えながら、酷い臭いのその場所に、おずおずと口を開けて舌を伸ばす。そうして、張り出した亀頭の溝をぷっくりと濡らしている先走りの雫をべろりと舐め取った。

「うぇ、ぐ……ん……っ」

舌先には生温いえぐみと塩味、そして鼻腔を刺すような独特な臭いが広がった。ヴァレーとて、性的交渉におけるこうした口淫の手法そのものは知ってはいた。だが、排泄のための器官に直接口で奉仕をするなど、衛生的にも、そして行為の理屈としても理解が及ばぬと、常々感じていた。
しかし、ここで兵士らに犯される中、どうしても傷付いた後孔が激しく痛み、あと一人の挿入も耐えられぬと思ったその時に——ヴァレーは口で奉仕をする事に思い至り、自らそれを提案した。兵士らはニヤつきながら、それも新たな楽しみ方だろうと快諾した。
始めはその不潔さや酷い臭い、そして先端から飛び出す精液の異様な風味全てに耐えられず、幾度も吐き気を催した。だが、ここで止めては傷付いた場所が、再び痛めつけられてしまう。ヴァレーは一心不乱に口と舌とを使って男たちを喜ばせていった。

「——ああ、よく分かってんじゃねえか。そうそう、そこの裏筋もしっかりな」

長官は自らの性器に舌を這わせるヴァレーを鑑賞しながら、その頭を愛おしむように撫で回す。ヴァレーは投げかけられた男の声に、顔を見上げた。ひと口には到底収まらない極太の肉棒は口元から溢れんばかりで、ヴァレーは男の長竿の側面を丁寧に舐め上げるよう、唇と舌とをいやらしく這わせているところだった。

「そろそろもったいぶってねえで、頭からがっついてしゃぶれよ。俺のがどれだけデカくて長かろうが、お前の喉は胃まで繋がってるんだろ? 俺のも流石にそこまでは届かねえ。なら、根元までしっかり飲み込めるだろうが。おらッ!!」

男はほどけかけていたヴァレーの髪をぐしゃぐしゃに乱しながら両手で頭をがっちりと固定すると、逃げられないようその喉奥目掛け、長大な陰茎をずぶずぶと押し込んでいった。

「ん、むっ、んぶ……ッッ!!」
「おい、歯ァ立てたらどうなるか分かってるんだろうな? しっかりノド、かっ開いとけよ」

頭をがっちりと押さえ込まれたまま、限界まで口を開いてやっと咥え込めるほどの太さのものが、ずる、ずるっと喉奥を押し開いていく。口での奉仕にどうにか慣れ始めていたヴァレーも、こうした強制口淫は耐え難い苦痛だった。

「んぐうっ、んっ、んっ、んんんんんっっ……!!」

男の言葉通り、歯を立てぬよう口と喉を限界まで開く。あの征服的な雄の象徴はヴァレーの舌根を越え、今や食道の管の中までみちみちと押し込まれていた。あたかもその場所が雄の性器を扱くためのものであると言わんばかりに男は抽送を開始する。太く長いそれは、ゆうにヴァレーの喉仏の辺りまで到達していた。

「んぶっ、うっ、むぐうぅぅぅっ」

どちゅ、どちゅんと長官のペニスが喉の粘膜を押し潰す。ヴァレーは息も絶え絶えに、喉粘膜が引き裂かれるような錯覚に目を白黒させていた。

——苦しい。息ができない。

今はどうにか、この行為の終わりを願い続けるだけだ。
だが、ヴァレーの頭は無意識のうちに、再びあの卑猥な幻覚を浮かび上がらせていた。
四人の男に取り囲まれ、全ての相手を同時にしながら悦楽に耽る自らの姿——。いつしか身体はあの動きをトレースするかのよう、腰をふらふらと揺らしてしまっていた。

「おいおい、どうした。まさか喉マンされて盛ってやがるのか? 犯されるのはココだけじゃあ足りねえってのか。はっ、調教の甲斐あって、ついにお前の本性が炙り出されて来たのかもな。淫乱ぶりが板についてきたじゃねえか。……なら、ご褒美だ。飯代わりに直接ザーメンぶっ込んでやるよ!!」

「ん、ぐっ、んんっ!、ん、ん〜〜〜〜ッッ!!」

自らの身体の変化に戸惑いつつも、ヴァレーは涙の溢れる瞳で男を見上げ、苦しげに呻く事しか出来ずにいた。その姿に欲情した長官は更に、ヴァレーの頭部を性処理玩具のように手酷く扱った。

「ああ、やべえ、出る、出るッッ!!」

——男の発射合図と共に、陰茎の根本に顔面を強く押し付けられる。喉奥に突き立てられている肉棒がビュク、ビュクと震える。食道に生温かい液体が、どろりと流れ落ちていく。
男が全てを出し切るまで、頭はまだ解放されない。太く縮れた毛が生い茂る、饐えた臭いのその場所に、ヴァレーは顔面を押し付けられたままビク、ビクと四肢をばたつかせていた。
ようやく精の放出を終えた陰茎がずるんと引き抜かれる。
ヴァレーの顔には飲み込むことすらできず零れていた唾液や、えづいた拍子に逆流してしまった精液が、鼻や口から無様に溢れ出していた。

「う、ぐえっ、げほっ、がは……ッ!!」

「はは、いい間抜けヅラじゃねえか。残さずにしっかり飲めよ。俺の味は格別だろう?」

ヴァレーの鼻の奥に、ねっとりとした精液の独特な臭いが充満する。長官は日々ヴァレーの体内に精を放っているにもかかわらず、その体液は毎度禁欲に溜め込まれたもののように濃厚で、どろりと濃く、粘ついていた。

「俺はまだまだ出し足りねえぞ。ここからが本番だ」

「う、ぐ、うっ……」

長官はでろんと長く伸びた陰茎を、再びヴァレーに見せつける。それは対象物を力のままに犯し、串刺し、征服するためだけに存在する物。そのグロテスクな見た目、そして質量のものが今から身体を深々と貫く事実に——ヴァレーは先の話に聞いた、串刺しにされた敗残兵の姿を思い浮かべていた。
だが、それと同時に腹の奥がむずむずとするような、卑猥な疼きも感じてしまっていた。

「まさか、今更拒否なんざしねえよな。さっきまで散々腰振ってやがったじゃねえか。お前も男が欲しくなってきたんだろ。ここの具合も見てやるよ」

自らの雄を見せつけながら、男は指に唾液を絡ませるとヴァレーの尻の谷間にずぷずぷとそれを捩じ込んだ。もはや指程度であれば呆気なく呑み込んでしまえるヴァレーの媚肉は嬲られ、淫らに掻き回されていく。

「うぁ゙、あ、あ゙、あ、あっ……ひ、あぁっ♡」

ヴァレーの腸壁は繰り返し男たちに擦られた所為で、以前よりも感覚が鋭敏になってしまっていた。男の指が今どの場所を責め立てているのかがはっきりと感じ取れてしまう。分厚く太い指で内壁を擦られるたび、全身に痺れるほどの快楽が脳髄に流れ込む。四つん這いのまま男の指を受け入れてあられもなく喘ぐ姿はさもみっともないだろうと思ったが、今は身体が与えられる快楽に堕ちてしまっていた。

ぐちゅ、ぐちゅっ、ぐちゅん。

耳には直腸内を掻き回すいやらしい音が響く。ヴァレーは既に、幾度か身体を震わせて軽いオーガズムを迎えていた。
男は、粘質な手淫を終えると、ひくひくと肩を上下させているヴァレーの尻に、再び硬さを取り戻した肉棒をずっしりと乗せた。それは「今からこれをお前の中にぶち込んでやる」と言わんばかりだ。ヴァレーがごくりと喉を鳴らすと同時に——上官は四本もの指を全て呑み込ませ、最後の仕上げだとばかりに入り口を拡張していく。

「ん……っ、ふぅ……、あ、うあぁ……っ♡♡」

悩ましげに揺すられる腰。寄せられたヴァレーの眉根に、じとりと汗が伝う。解けた髪は汗と男の体液とで濡れ、煩わしく顔にへばりついていた。上体は地面に付したまま、尻だけを男の方に高く突き出させられて喘ぐ——。

長官は肛腔を嬲る指をずるりと全て引き抜くと、くくっと嘲るような笑みを溢した。

「……思った以上に開発されてやがる。この調子だと、もうすぐ俺のも全部飲み込んじまうか? ほら、入るぞ」

——快楽に蕩けた身体は脱力し、両足をパックリと開かされたままのぐずぐずにふやけた肛門に、男の亀頭がぐちゅんとあてがわれる。柔らかくほぐされ、さまざまな粘液に濡れ、刺激で赤く色づいたアナルの入り口を内側に捲り込みながら——先程目の前に曝け出された、あの巨大な肉の塊が自らを犯すのだ。
ヴァレーは痺れる脳髄の奥底で、こうも思っていた。この男のものなど、未だ根本まで受け入れられた事はない。受け入れられる日は来るのだろうか? もしも受け入れてしまったら、自らの身体は一体どうなってしまうのだろうかと。
男はヴァレーを犯し、自らの精をヴァレーの中に放つ度、こう囁いていた。「いつかお前は、俺を完全に受け入れる。その時を楽しみにしているのさ」と。

——男のものがぎちぎちと直腸を圧迫していく感覚に、ヴァレーの口は酸素を吸い込もうと大きく開かれた。少しずつ、少しずつ奥へと押し込まれて行く度に何かが壊れてしまうのではないかという想像が、身体を固く強張らせる。

「力抜けよ。せっかく綺麗になってきたのに、またケツ裂けちまってもいいのか?」

「……ふ、ぁっ、はーーっ、あっ、は、ぁ、あ、ぁ、っ」

力を抜くために大きく息を吐く。だが、そのタイミングに合わせて男がわざとらしく腰を突き出し挿入を深めるため、押し出されるようにあられもない声が漏れ出てしまう。今や自らの腸腔はぐっぱりと広がってどうにか男のものに吸い付き、裂けてしまわぬよう必死に媚びているところだった。

「ングっ……、んんっ……んっ……♡」

「おっ? そろそろこっちも素直になってきたんじゃねえか? ほうら、ここまで入ったぞ。今までの最高記録かもな。これからどこまで俺を受け入れるのか、見せてくれよ」

「……ひぃっ、う、ぐ、ぁ、はーっ、はーーっ♡♡」

「おらっ!! さっきみたいに腰振ってみろ!!」

深々と男の楔を突き立てられ、腹の奥の限界までみっちりと拡張されたそこにはもうわずかな隙間もない。腰を振ろうにも、前後に動かすだけの余裕もなかった。それでも、この男のものはまだ根本まで受け入れていないのか——。
ヴァレーは腰をしならせると男のものを抜き差しをするのではなく、体内に埋め込んだまま艶めかしく揺さぶる事で搾り上げ、直腸内で愛撫し始めた。それは先ほどの猥雑な記憶にある、自らが男たちに施していた性技だった。

「あ゙——、ナカうねらせやがって……! クッソ、ちんこ溶けそうだ……。その動き、なかなかエロいじゃねえか。おい、どこでそんな技覚えて来やがったんだ?」

「ん、ふ、ぁ……、あっ♡ あ、あ♡」

「なんだ? おいおい、顔トロけて自分から良いところにぶち当ててんのか? ……なら、俺も遠慮はいらねえな。デカマラピストンで、気ぃ失うまでイキまくれッッ!!」

「んお゙ッ?! ぉお゙……♡♡――……ッッ♡♡ あは♡ あ、ん、ぁあ゙ああ゙ぁッッ!! むり、む、無理、ィ……♡ おしり、むり……ッッ♡♡」

感度の増幅した身体に与えられる激しいピストンに、ついにヴァレーの理性が屈服した。
全身がビクビクと跳ね、開かれた口からは絶頂によがる喘ぎ声があられもなく溢れ出していく。男はヴァレーの身体を押さえ込むと、全体重を掛けて尻穴の中をプレスし、激しく犯し続けた。

「おらっ、おらっ!! 俺のチンポに狂えッッ!! このっ、おっさんのくせに美味そうにケツで男搾りやがって!!」

「――ッお゙……♡はああぁああ……ッッ♡♡……っぐ♡イくぅ゙……♡♡お゙ほ、ッッ……♡ふーっ……♡ふーっ……♡♡んぶっ、ん、んぅう♡♡はぁっ、はーーッ……、い、ッぅぐ♡ふぅ゙うう♡♡」

独房に響き続けた悲痛な叫びが快楽に堕ち切った喘ぎへと変わる様を見て、長官もまた色めき立っていた。彼もまた、ヴァレーの身体を征服し、調教する悦びに猿のように支配されていった。

「……雌みてえな声出しやがって、この俺に孕ませて欲しいんだろ!! 中に出すぞ!! ケツでザーメン搾り取って全部処理しろ……ッッ!!」

「――ッあ゛♡くる、……くるぅぅッ♡♡ ひぐっ、う゛ぅううぅ♡ あ゛っ、あ~……♡ あ゛……♡♡」

 

◇◇◇

 

「——ふーーっ、ふーーっ、こんだけ出しゃ流石に弾切れか……。どうだ? 俺のは凄かっただろう。まだ完全にぶち抜くには、もうあと少しってとこか。……早く、俺専用になっちまえよ。なんだ? 気ィ失ってやがるのか? チッ、つまらねえな。今日はこれで仕舞いだ」

激しすぎる情交の末、もはや意識は途絶えてしまっていたが、ゆうに半日ぶりにヴァレーの身体が解放された。

長官は入り口を見張らせていた門番を呼び付けると、後始末を言い付けて独房を後にした。